令和2年に改正建設業法が施行されました。
ここで、建設業許可の要件が一部緩和されたので、その点をざっくりと解説します。
建設業許可を取るためにはいわゆる5大要件を満たすことが必要です。
この五つです。
① 経営業務管理責任者がいること
② 専任技術者が営業所ごとにいること
③ 請負契約に関して誠実性があること
④ 請負契約を履行するに足りる財産的基礎または金銭的信用性を有していること
⑤ 許可を受けようとする者が一定の欠格要件に該当しないこと
この中でも特にハードルが高い要件が①「経営業務管理責任者」でした。
この要件を満たすことができないために、許可を取りたくても取れない業者が大量に存在していました。
そのような背景もあって、大規模な建設業法の改正が行われると発表された時には、
「もしかしたら経営業務管理責任者の要件はなくなるんじゃないか?」という噂も流れていました。
しかし・・・
蓋を開けてみれば「経営業務管理責任者」の要件はしっかりと残っていました。
とはいえ、緩和されたと言える部分もありますので、そこを解説していきます。
最初にめちゃくちゃざっくりといいます。
「個人」に必要とされていた経営能力が、「組織」に備わっていればいいよ、という内容に変わりました。
「経営業務管理責任者」がいなくても「経営業務管理責任体制」が整っていれば良いということです。
チームとしてしっかり経営できる体制があれば、ちゃんとした経営能力がある人物がいなくても許可を認めてあげますよ、とハードルを下げてくれたのです。
ただし、必ずしも新規の許可取得が容易になったわけではありません。
細かく設定された複雑な要件を証明することはかなり大変です。
逆に、許可申請手続きをすることは難しくなったのでは?という印象です。
では、具体的に見ていきましょう。
まず改正前の「経営業務管理責任者」の要件はこうなっていました。
(a) 許可を受けようとする建設業に関して、法人の役員、個人事業主、建設業法施行令第3条に規定する使用人として、これまでに5年以上の経営経験(経営業務の管理責任者としての経験)を有すること(建設業法第7条第1号イ、国土交通省告示)
(b) 許可を受けようとする建設業以外の建設業に関して、法人の役員、個人事業主、建設業法施行令第3条に規定する使用人として、これまでに6年以上の経営経験を有すること(建設業法第7条第1号ロ、国土交通省告示)
(c) 許可を受けようとする建設業に関して(a)に準ずる地位にあって、これまでに6年以上の経営補佐経験を有すること(建設業法第7条第1号ロ、国土交通省告示)
これが、法改正により、以下のように変わりました。
イ 常勤役員等のうち一人が下記のの(1)、(2)又は(3)のいずれかに該当する者であること(建設業法施行規則第7条第1号イ)。
(1) 建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者
(2) 建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る)として5年以上経営業務を管理した経験を有する者
(3) 建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として6年以上経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者
ロ 次の(1)又は(2)のいずれかに該当する者であって、かつ、当該常勤役員等を直接に補佐する者を置くこと(建設業法施行規則第7条第1号ロ)。
(1)建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有し、かつ、五年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者
(2)五年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有する者
そして、「補佐する者」とは以下の(a)(b)(c)に該当する者(全て必要)
(a) 許可申請等を行う建設業者等において5年以上の財務管理の経験を有する者
(b) 許可申請等を行う建設業者等において5年以上の労務管理の経験を有する者
(c) 許可申請等を行う建設業者等において5年以上の業務運営の経験を有する者
わかりにくいですよね?
要件が緩和された箇所を簡単にまとめます。
改正前は許可を受けようとする建設業の経験年数が必要でしたが、改正後は建設業の種類は問われなくなりました。
また、建設業の役員として5年以上の経験がなくても、補佐する者をつければ許可が認められる可能性が与えられました。
要は、チームとしてちゃんと経営できる体制があれば許可を認めてあげますよ、という趣旨です。
このように、緩和はされています。
されていますけど、手続きの際に要件を満たしていることを証明することは結構複雑になっていますね。
なので、許可申請の手続き自体は逆に難しくなったと言えるかもしれません。
以上のように、要件緩和によって新規許可取得が必ずしも容易になったわけではありません。
しかし、改正前では許可が認められなかった業者様でも、この改正によって許可取得が可能になるケースは当然に増えています。
といっても、法の規定や申請手続きは複雑でなかなかわかりにくいものだと思います。
ご自身で時間をかけて検討されるよりも、専門家に聞いた方が早いし確実です。
「許可が取れそうかどうかだけでも知りたい」という相談だけでも構いません。
建設業許可取得を検討されている業者様はお気軽に当事務所にご相談ください。